何か気がつけば2009年のF1シーズンが終わっていた。 そんな気持ちが強く頭の中に残ったままになっているのは、おそらくは私に限ったことではないのではないでしょうか。 特にアブダビGPは最終戦なだけに、そうした感情を私たちに植え付けることに大きく寄与したグランプリとなりました。 セバスチャン・ベッテルの「本当のチャンプは俺だ」と言わんばかりの素晴らしいドライビングと勝利。 トヨタから前戦ブラジルに引き続きチャンスを得た小林可夢偉の、参戦2戦目としては中々に頭を使ったレース運びとスピード。 終盤のマーク・ウェバーとジェンソン・バトンによるバトル。 と、挙げてみれば見所となった点はそれなりにあったものの、逆の言い方をすれば見所であった点はこれしかありませんでした。 それよりも、ドライバーにとって見れば迷惑このうえないだけのトワイライトレースというレース環境に始まり、つまらないコースレイアウト、意味のないトンネルピットレーン、目障りに色調を変えるイルミネーションなど、F1がエンターテイメント性を持つべきと主張しているコアなファンでさえ、その時代に沿わぬバブリーな光景には眉をひそめたのではないでしょうか。 テレビカメラの映像を通じてこれら煌びやかな光景が茶の間に届けられたからといって、いったいそれが何の効果をもたらしたというのでしょう。 イルミネーションが綺麗?黄昏時を疾駆するF1が美しい? 確かにそれは事実かも知れませんが結局はそれだけのことで、私たちファンが期待するF1グランプリはそんなものではなかったはずです。 そのような低俗極まりない環境下でレースがおこなわれたせいもあってか、太陽が完全に沈むまではダラダラと周回が消化されていくだけのレースが展開され、陽が落ちてからはタイヤマネジメントの重要性が失われ、いわゆるバトルといわれるレース本来の光景が展開されたのは終盤も終盤、ほんのわずか数周のみ。 最終戦を待たずしてタイトルがジェンソン・バトンの手にもたらされた後とはいえ、これが最終戦だろうか、いやこれがF1なのかという不快と言ってもよい思いだけが残された2009年シーズンの終幕でした。 そんなF1の今後に一抹の不安を覚える私たちファンの気持ちと歩調を重ねるかのように、砂漠の地から遠く離れた日本ではひとつの決断が今まさに下されようとしていました。 トヨタ、F1より撤退。 トヨタのこの日本での決断については、諸説あるもののやはりシーズン終盤にはほぼ決定していたと見るのが正しいのでしょう。 この撤退の情報は日本から出向している極一部の重鎮にのみ伝わっていたと言われています。 F1などのスポーツの世界では、シーズンの終了とともに次のシーズンに向けて即座に動き出すといわれていることは皆さんもご存知のことと思いますが、おそらくトヨタチームの面々もまた同じように来季に向けて気持ちを入れ替えつつあったのでしょうが、そこにもたらされた撤退の報。 現場で活動するスタッフの心中たるや、察するに余りあるというものです。 そもそもトヨタの撤退に関しては、それこそ今シーズンが始まる以前よりこれまで噂という形で絶えることなく語られてきたものであったため、シーズン終了直後の撤退発表という手法を選択しているにもかかわらず、昨年のホンダ撤退の報のように誰も驚きをもってそれを受け取るということはなかったのではないかと思います。 おそらくは誰もが無意識に「ああ、やはり」という受け取り方をしたのではないでしょうか。 そういう受け取り方を周囲がした背景には、先にBMWが今季限りの撤退を発表していたことによって、前述の撤退の噂が長生きすることに一役かってくれたこともあるかもしれません。 それがトヨタの狙いだったとすればそれはそれでたいしたものだと感心しますが、私が思うにトヨタは昨年のホンダの突然の撤退による周囲の反応を見てすべてを学んだ結果だと思っています。 コンコルド協定への調印後であろうが、来季参戦のエントリー終了後であろうが、ある程度の問題に関してはF1というトヨタから見れば極めて限られた世界での話題であって、ペナルティを科せられたところでそれはFIAからの金銭要求の範囲内であり、またチームの精算にしても金銭で解決できる範疇のこと。 また、レースに特段の関係を持たない者や株主などの資本家については、撤退発表会見でも語られたとおりに経済環境の悪化による苦汁の決断であったことをことさらに前面に押し出し、優れた人材を本来の市販車開発に振り向けることを今後の方針として打ち出すことで納得させることができることを、トヨタは充分に理解しています。 特に欧州を中心に多少の反感をかうことはあっても、今も最大のマーケットであることに変わりない北米市場には、F1が今や開催されていないこともありほとんどマイナスの要素となることはなく、モータースポーツに関してはまるで音痴の日本のマスコミ相手には、山科氏の涙もオマケにつけて充分過ぎるほどの演出。 既にここまででお気づきの方もおられるように、ホンダ撤退の時と版で押したように同じ流れ。 異なるのは、ホンダにとってF1が自動車メーカーによって直接所有されるチーム主体になってから初めての撤退メーカーであったこと、そしてホンダが残したチームが次のシーズンが開幕するやいなや連戦連勝を重ね、あろうことかドライバーズ&コンストラクターズというダブルタイトルまでを獲得してしまったことです。 そうした視点から見てみると、トヨタは目論みがはずれたもののルノーの撤退発表すらも待っていたフシがあり、またチームの母体となっているTMGは売却することなく規模を縮小して海外モータースポーツの拠点とすることを明言しています。 そうすることでトヨタの撤退は「仕方の無いこと」として世間一般に理解を得られることになり、自分達の残したチームが自分達以上の栄誉を得てしまうという屈辱に耐える必要もなくなります。 更に言わせてもらえるならば、ドライバーとの契約更新をしていなかったことも、ホンダの一件から学んだことのひとつでしょう。 確証があるわけではないことを前置きしておきますが、もしもチームスタッフとの契約更新すらしていなかったのだとすれば、トヨタはドライバーだけでなく、TMGの規模縮小にともなって整理される550人とも言われるスタッフに対しての契約解除ペナルティを支払うこともなくチームの精算、つまりリストラを実行できることにもなります。 もっともホンダの場合も、ロス・ブラウンへのMBO実施後に人員整理を実施するよう仕向けているため、対象となったスタッフにけして正当な契約解除料を支払ったうえでのチーム精算ではなかったので、私のこの物言いがホンダ擁護の発言ではないことを誤解のないようここに申し添えておきますが、いずれにせよトヨタにとって昨年のホンダによる突然の撤退劇はおおいに参考になったことは想像に難くありません。 こうして次々に撤退の決断を下したホンダ、そしてトヨタによってF1界における日本企業への信頼と信用が地に堕ちたことは間違いありませんが、先にも述べたとおりそれはF1界という極限られた世界の話であって、また仮に欧州全体への影響があったとしても、もともと資本主義社会の中で金銭的信用以外の信頼をもともと得ていなかった日本企業にとっては、その評価が元に戻ることはあっても日本企業にとって最も重要視される体面が崩れ去ることはないというわけです。 まさしく用意周到。 さすが世界のトヨタを自認するだけのことはある、と言ったところでしょうか。 しかし、欧州の重要な文化のひとつであるF1という世界を濁す格好で撤退を決めたホンダ、そしてトヨタではありますが、だからと言って彼等F1界の人々、というより特にFIAとFOMに対して日本人として申し訳ないとか、気の毒とかいった感情は微塵も湧いてくるものではありません。 冒頭に申し上げたとおり、FIAやFOMの一部重鎮だけを喜ばせる滑稽でバブリーな施設が完備されたヘルマン・ティルケ設計の極めてつまらないサーキットがもてはやされ、ドライバーもファンもチャレンジングと認めるオールドサーキットが赤字間違いなしの法外な開催権料によって消滅していく現実や、利権に凝り固まっているFIAが映像等の版権を牛耳ることで本来の広告塔たる役割が失われてしまっていることなど、ファンやスポンサー、そしてメーカーがF1を見限る原因を挙げ始めたらそれこそキリがありません。 それを証拠にこれまでF1に参戦してきたフェラーリを除くメーカー、つまりメルセデス、BMW、ホンダ、トヨタ、ルノー、および彼らにスポンサードするブランドが、一昔前のようにF1の映像を広告やCMに使用することは極めて希ですし、実際にF1の成績とは関係なく彼らが生産する商品は売れたり、売れなかったりしています。 更にそれに追い討ちをかけるように、時代の流れもあるのでしょうが技術的な開発制限をかけられてしまっては、F1に参戦するメーカーは完全にモチベーションの源を失ってしまいます。 もっともこのメーカー主導の技術開発競争こそが巨額な参戦費用を必要とするスポーツにF1を一変させ、これを頭打ちさせようとするあまり、FIAやFOMを技術開発制限規制に踏み切らせていることを考えれば、ようするにどっちもどっちということではあります。 何が言いたいのかと申しますとつまり、いずれにしても彼らの思考回路にこれまでで完全に欠如しているのは、ファンに楽しんでもらおうとか大切にしようといった、観戦者の存在を欠くことのできないスポーツという娯楽の本質を理解する努力だったのだろうということです。 この先のF1がどのようになっていくのか、今のところ心配も期待も特にはしていません。 参戦チームが極端に少なくならない限りは、モータースポーツの最高峰であり続けられるかどうかは別にして、これからもシリーズとして続いていくでありましょうし、残ったメーカー系チームはエンジン供給や車体供給などによる収支バランスの再考などで、F1界での新たな自活の道を見出していくのかもしれません。 いずれにせよ、2010年シーズンが開幕した時点で興味の湧く存在であれば私はまたなんだかんだと観戦するでしょうし、眉間に皺を寄せねばならないようなものに成り果てていれば、見ることはないでしょう。 もっとも私がそんな偉そうなことを言っていられるのも、来年はトヨタというスポンサーを失い、2011年以降はブリジストンからのそれも失うことが決定しているフジテレビジョンが、これまたFOMの法外な放映権料に屈することなく中継を継続してくれていればの話ですが・・・。 何やら盛り上がらない暗い話題に終始してしまい皆さまには誠に申し訳ないのですが、私たちにとっての唯一の明るい材料となり得ることといえば・・・・。 そうですね。 ここまで来てあらためての説明は無用ですね。 来週11月21日、毎年恒例となっている琢磨のファンクラブイベント「Takuma Club Meeting 2009」が開催されます。 日本GPに合わせて来日した際、琢磨は「来年もドライブしないことなどありえない。クラブミーティングまでに決めておきたい」と語調を強めていただけに、その動向が気になるところです。 琢磨によって、私たちが明るさを取り戻すことのできるようなニュースを提供してくれることを信じて今週を過ごし、私もイベントに参加してきたいと思っています。 どうか、ここを訪れていただける方々と喜び合えるような話が、琢磨本人の口から私たちにもたらされますように・・・。
【P・S】 MotoGPにおいて250ccクラスに参戦していた青山博一の世界タイトル獲得を心より祝福したいと思います! 日本のマスコミはあいかわらずの醜悪ぶりで、中日スポーツを除いてこの快挙をほとんど報じていませんが、彼は開発の止まったマシンを駆り、日の丸を背負って実力でタイトルを獲得した素晴らしいライダーです。 来年はMotoクラスにステップアップして、また素晴らしいライディングで私たちを魅了してくれると確信しています。 興味のある方は、佐藤琢磨と同じくらいに是非「青山博一」も応援してあげてください!
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